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alliance of sincerity
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いぶき、むつみ、なりゆく。ピアノ。

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いぶく

ご存じのように、木は湿度の影響をうけ易く、金属は温度変化に敏感に反応します。 200本以上の弦が張られ、全体に15~20トンほどの力がかかっているピアノの本体は、木材と鉄の鋳物という、それぞれに環境の影響をうけやすい素材の組み合わせでその力を支えています。
これらの部材は張力によって恒常的に圧縮されているのですが、素材である木材や鋳鉄自体、時間の経過とともに変質します。
ピアノの本体は、置かれている環境に呼応して時々刻々伸び縮みしつつ圧縮され、素材自体の変質も手伝って安定した状態に向かうのです。

弾き手のタッチを本体に伝えるアクションのパーツは大部分木材からできていますが、それらが滑らかに動くとともに動作ノイズを軽減するため、フェルトやクロス、皮革などが多用されています。 最近では人工皮革も使われるようになりました。
これら素材ももちろん環境変化に敏感ですが、作動には力がかかることで、部材が摩耗したりパーツそのものが変形したりします。
そしてやはり、本体を構成する木材や金属同様これらの素材も自ずから変質することに違いはありません。
ピアノのアクションも日に日に変わってゆくのです。

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むつむ

ピアノは置かれている環境に呼応すると申しましたが、このこと自体、ピアノと環境との対話ととらえることができます。 そしてピアノと環境とには、もう一つの対話があります。それは、ピアノとそれが置かれている場所との対話です。
ピアノを弾くと音がしますが、音とは空気の振動です。振動は周囲のものに当り、その一部はいわば山のこだまのように跳ねかえってきます。 こだまが自分に聞こえるように、跳ねかえされた音はピアノ本体を振動させます。
このように、ピアノはその場の環境のみならず場所そのものとも対話しています。

鍵盤は、微妙に異なるタッチも一瞬ゝゝに捉えて、小さな音大きな音、柔らかな音鋭い音と、タッチのとおりにピアノを鳴らします。
鍵盤を弾くとアクションに力がかかって動きます。このとき、タッチの違い=力のかかり方の違いに応じてアクションパーツの一部がひずみます。 運動の速さもタッチにより異なりますから、音の違いは、速度とひずみ方の違いで生じると推測されます。
そして、同じようなひずみ方が繰り返されると形が固定され、それが、他のピアノにはない独特な個性につながります。
このこと自体、弾き手とピアノとの対話と言えますが、自ら生み出した個性的なピアノで音楽を奏でることで、何にも増して、弾き手とピアノは対話をしているのです。

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なりゆく

バイオリンにストラディバリウスという銘器があります。
実は、片腕に抱え込めるくらいのバイオリンからどうして大音量が出るのか、本当のところは解明されていないのだそうです。 一説には、木材に含まれるセルロースが長い歳月のあいだに硬く結晶化するからだといわれています。
ピアノに使われている木材も、同じように結晶化することでしょう。
ピアノ本体の木材と一緒に張力を支えている鋳鉄のフレームは、数年を経て安定するといいます。 200本以上ある金属の弦は段々と弾力を失い、パーツに使われている皮革やフェルトも追々硬くなります。
が、素材そのものが変質するだけではありません。

先にアクションパーツの変わり方は弾かれ方によって違うと申しましたが、いまご説明した時間による変質より、弾き手によってもたらされる変化の方が、はるかに強く影響すると言えます。
ピアノは、歳月を経るごとに素材の性質が変わり、お部屋の環境や響きに左右されながら、弾き手のみなさんによって育まれることで成長するのです。

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ピアノのすこやかな成長には ・無駄なく・無理なく・忠実に [いま] をとらえたタイムリーなケアが大切だと考えています。

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無駄なく

「料理」とは「理(ことわり)を科(はか)ること」だといいます。食材に様々な調味料や香辛料を加え、加熱して化学反応をおこすことで調理するのですから、尤もなことです。「料理」にならえば、「調理」は「理(ことわり)を調(ととの)えること」と読めます。
「下ごしらえが8割」ともいわれます。火のとおりや味の滲み方がまちまちな食材を調理してイメージどおりの一皿に仕上げるには、なによりタイミングが肝心で、だから準備万端調えておくのですね。
このことを我々の仕事におき換えると、ピアノを拝見したとき、いまこそ必要な手当てを探り当てて資材や工具を準備し、施工することにあたります。

ところで、料理の場合の「無駄」とはどういうことでしょうか。すぐに思い浮かぶのは、下ごしらえの失敗や煮過ぎ・焼き過ぎです。
どれも好ましいことではありません。せっかくの美味しい部分を捨てていたり、もしかしたらひどく焦げて料理ですらなくなってしまうかもしれません。
我々の仕事でいうなら、年月が経ち弾き手になじんだパーツが落着いているのに、新品の状態とは異なるという理由で何らかの手を加えて時計の針を逆回ししたり、 掃除をすれば円滑に動くのに、本来不必要な潤滑剤を塗布してその劣化による悪影響を招来してしまう失敗です。

料理もピアノのメインテナンスも、「無駄」は避けなければなりません。

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無理なく

健康維持などの目的でからだを動かしていらっしゃいますか?
言うまでもないことですが、せっかくの運動もやり過ぎてはからだを壊してしまいます。
我々の仕事にも同じことが言えます。

調律を例に考えてみましょう。
調律は、「弦の張力をむらのないよう調整して本体を均一に安定させ、音律を整える作業」です。
上手にむらなくつりあいがとれれば目立って狂ったりはしないのですが、弦にはいくつか屈曲している場所があり、この工程を中々難しいものにしています。
調律したのにすぐに狂ってしまうのでは本職としてやっていけませんので、そうならないよう、どこかに余分な張力を持たせてしまいがちです。
そうすると、余分に張力をかけられたところはほかより細くなって、1本の弦の中に性質の異なる部分ができることで切れやすくなったり、また早く弾力を失うことでしょう。
アンバランスで余計な張力が常時ピアノ本体にかかることになりますから、本体の材質が、考えられていたより硬くなる可能性も考えられます。アンバランスな張力分布は、本体を変形させるかもしれません。
いずれにせよ、このような状態が長く続けば、ピアノへのダメージは避けられないものとなります。

運動もピアノのメインテナンスも、「無理」は禁物です。

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忠実に

我々の仕事も「理を科る」ことや「理を調える」ことでは、何ら料理と変わるところがありません。
日常的なピアノのメインテナンス作業には、先にご説明した調律のほか、一般的な分け方をすると
・整調 - 弾き手の運動が弦を振動させるエネルギーに正しく変換されるよう、レギュレーションに基づいてアクションを整える作業
・整音 - アクションの運動エネルギーが、最も効率よく弦振動におき換わるよう、弦に衝突するハンマーフェルトの密度勾配を按分する作業
があり、料理同様、それぞれに合理的な手順があります。
それを違えたりとばしたりしたためにイレギュラーなコンディションで弾かれ続けると、パーツが好ましくない変わり方をすることがあります。
こうしたことはパーツの寿命を縮めるばかりではなく、ピアノのすこやかな成長のさまたげとなるのです。
「忠実に」とは、ピアノの[いま]のすがた、レギュレーションと手順に対するの姿勢であり、ピアノのすこやかな成長をサポートする最も効率のよい方法です。

お客様は、一口で言って「弾きやすく、よく鳴るピアノ」を私たちにお求めになります。それは、時々に応じてすこやかに成長したピアノをお求めになることと異なりません。
ですから先に述べた「忠実」な姿勢こそが、お客様のリクエストに「忠実に」お応えする上でも、最も効果的な方法であると考えています。

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効果的なケア - メインテナンスには、正しい知識に裏うちされたたしかな技術と、お客様の鋭い感性に育まれた密度高い豊かな経験が欠かせません。

ここで幾つか、プロセスについてお話しさせてください。

ピアノはもちろん、音楽を奏でるためにあります。が、私たちメインテナンスする者から見ると、つれない言い様ですが物理現象のかたまりです。この世のものですから、自然の法則に則ったことしかおこりません。 プロセス最初のお話しは、ピアノがかかわる物理的なプロセスのことで、ピアノのメインテナンスに携わる者は、これを正しく把握していなければならないということです。

ふたつ目は、仕事のプロセスのお話しです。我々の仕事は、因果を分かちがたい関係にある ・知覚 ・技術 ・経験 ・知識 に基づいて[観察]→[判断]→[実行]→[評価]するプロセスのくりかえしなのですが、 現場には自分しかいない、という大きな落とし穴があります。 ピアノと向き合って何か異変を感じると原因をさがし出して適切と判断した手当てを施すわけですが、おかしいと思ったのは自分、原因を見つけたのも自分なら手当ての手段を決めたのも、手当てするのも自分、そして結果を評価するのもやはり自分なのです。 おかしいと感じたところを「直した(治した?)」のですから、評価は「以前よりよくなった」となりがちです。が、同じ部分を見ておかしくない他者から見れば、以前より悪くなっているのかもわかりません。
そして、この様なことが[観察]→[判断]→[実行]→[評価]プロセスのどこでおきても、正しい結果にはつながらないのです。

最後は、お客さまも含めた少し毛色の違う問題です。「忠実な」のところでも申しましたように、お客さまのリクエストにお応えするのがの目標のひとつでもあります。 一般的な、お客様自身が所有なさっているピアノの場合は「忠実な」のところで申し述べたとおりのプロセスで完結します。 が、の面々が普段従事しているコンサート業務の場合、オーディエンス、ピアニスト、マネジメント、そしてピアノのオーナーである施設と、立場の異なる4者のお客様がおいでです。 直接には技術料金をご負担くださる向きをお客様と考えられますが、ではその料金の出所はというと、オーディエンスの皆様のチケット代金なのです。 さて、お客様とはどなたを指すのでしょう。或いは序列化できるのでしょうか。議論は様々ですが、オーディエンスのご期待に応えられなければ、プロセス全体が機能しなくなることだけはたしからしく思われます。

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は、日ごろから国内各地の文化施設などでメインテナンスやコンサートに携り、のコンセプトにしたがって精選されたテクニシャンのみなさんと、コンセプトを理解される企業とのグループです。

technicians

岩本尚子 いわもとなおこ

2006年4月 スタインウェイアンドサンズ 関東地区特約店 入社。
スタインウェイアンドサンズ社・ハンブルク工場において研修した経験をもつ。

「全国のホールや録音スタジオ・放送局からご自宅のピアノまで、ピアノのメンテナンス業務に幅広く携わってまいりました。
お客様の快適なピアノ生活をサポートしてまいります。」

厚生労働省認定 一級ピアノ調律技能士

片山康佑 かたやまこうすけ

スタインウェイアンドサンズ社、ベーゼンドルファー社をはじめ欧米の著名な全ピアノメーカーにパーツを供給するドイツ・レンナー社日本総代理店・レンナージャパン株式会社の認定テクニシャンであり、日本各地で開催されるレンナーセミナーの講師として技術指導にあたる。
南北アメリカ大陸の主要な楽器用製材会社でパーツサプライヤーのカナダ・ボルドゥック社で、環境に合わせた木材のシーズニング法、欧米では一般的に行われているピン板や響板・駒を交換する修理の技術を習得する。
国内外を問わない各メーカーの設計変更を、数多の実機で計測している数少ない技術者で、年代的変遷を熟知し、レンナー社の商品開発に、その優れた計測技術で正確なデータを提供する重要なパートナーでもある。

現在、JMG株式会社におけるオーバーホールや修理の中心的テクニシャンであると同時に、豊富な経験に裏付けられたレンナーテクニシャンとして、全国のピアノ調律師から寄せられる修理やパーツ選定の相談やパーツの製作にも応じている。

厚生労働省認定 一級ピアノ調律技能士

小谷幸永 こたにゆきなが

幡豆祟史 はずたかし

平山響一郎 ひらやまきょういちろう

ピアノの修理工房として1936年(昭和11年)に創業した、「平山ピアノ社」を経営する平山家に生まれ、物心つく前からピアノに囲まれて育つ。
栃木県にあったイースタイン社の工場で21歳からピアノ作りに従事し、本体・アクションの組み立てから仕上げの工程も経験。
イースタイン社工場の閉鎖後、スタインウェイピアノ日本総代理店であった松尾楽器商会に入社。
精力的に技術を学び、1年をまたず任命されたブルーノート大阪で、邦人・外来を問わない非常に厳しいアーティスト達の信頼を得て、10年に亘りスタインウェイピアノの専任テクニシャンを勤め、のち独立。

現在は、数多くの一流ピアニスト・アーティストのライブやレコーディングを支える現場から一般家庭まで、ベストパフォーマンスを発揮するピアノを一台でも多く提供できるよう、精進を続けている。

厚生労働省認定 一級ピアノ調律技能士

執行直 しぎょうただし

〒213-0022
神奈川県川崎市高津区千年256-1
メイツ武蔵小杉富士見台 407
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ほか数名のメンバーがおります。

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