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最適化

我々調律師の仕事は、所謂 メインテナンス だ。

端的なのが清掃作業である。喩えばフロントピンの汚れを落とす。落とすとどうなるか。鍵盤の動きがスムースになる。
設計時点でフロントピンが汚れて鍵盤がスムースに動かないことが考慮されているか。そんなことはない。この清掃作業はだから、フロントピンに期待される機能を回復する作業である。

言い換えれば、メインテナンスとは設計に基づいて製作されている実機の機能をマイナスの現状を消す作業だ。いくらマイナスを消していってもプラスにはならない。マイナスを全部消したらゼロになる。元に戻る。

が、中には無理やり設計寸法や寸度に戻せない、不可逆的な事象もある。変形したローラーが元に戻ることはない。ローラーは元々バラつきの多いパーツではあるが、加えて、時間とともにバラつきは増大し、設計寸法には戻らない。

潰れたローラーはどうしようもないのだろうか?交換以外にも形を戻す方法がなくはないが、普段に施工するならばやはり汚れ落としだろう。可能な範囲で最適な状態を求める訳だ。

メインテナンスは原状を回復する作業ではなく、現状を最適化する作業だ。